vol.29「とら吉」

2008.06.24

とら吉とは、猫の名前ではない、、、
私の住まいの近くにある大衆食堂の名前である。この食堂に通い始めたのはもう20年以上前のこと。定食にボリュームがあり、揚げ物がおいしい。グルメの話をしたいわけではない。しばらく閉まっていたこの店が、先日再び開店したので、久しぶりに入ってみた。定食の味はいつもと変わらずおいしい。しかし、いつも定食を作る大将の姿は無く、お父さんそっくりの息子さんが定食を作っていた。大将の奥さんに話を聞くと、大将は病気で亡くなられたとのこと、悲しい知らせである。しかし、その後店を受け継ぎ母と二人、店を支える息子さんの姿がうれしかった。働く人々の背景には、それぞれの人生や生活がある。いかなる状況においても、与えられた仕事に対して、精一杯がんばっている人を見ると勇気をもらう。生前父は淡々と揚げ物を揚げ、今息子が変わり、毎日揚げ物を揚げている。絵描きに2代目はない。しかし我一代、淡々と仕事を続けたい。