vol.27「マルティーグ港」
2008.04.26
東急渋谷個展での出会い。
それは母と娘さんらしき親子、はじめお見かけしたときの印象は、品の良い裕福そうな親子。ただそんな目で見ていただけかもしれない。人を見た目の印象や、身なりで決め付けることは、まったく馬鹿げた偏見のような見方であるが。
私の作品を見ていただいている間に、お話する機会ができた。娘さんは二十歳過ぎ、このマルティーグ港を気に入ってくださった。お母さんは娘の気に入った作品を購入してもかまわないと言うが、娘さんはすぐにそのお母さんの思いを受け入れはしなかった。そこから三人で2, 3時間、絵や生き方にいたる多くの話題について話す事ができた。もちろん私は会場で絵を見ていただき、出来れば購入してほしいと思っている。これは正直な気持ちである。しかしこの3時間近い話の中で多くのことを学び、会場で作品を紹介する意味をあらためて感じことができた。娘さんは、自分の力で買いたいと思ってくれていたのである。
そんな気持ちや、母へのさまざまな気配り、やさしさを見たとき、私は、この娘さんの思いに共感できた。
いつか私の力で買いたい。もう、そう言ってくれた思いに感謝で一杯であった。この娘さん、そしてお母さんが、これから個展のたびに来場していただけるなら何年先でも納得できる状況で私の絵を買ってほしいと思った。もちろん先の事などわからない、たとえ買っていただく事がなくても、絵をとおして、長い年月をかけて人と関われるすばらしさを感じられた事が、何より重要であり、うれしかったのだ。