vol.22「テオ その2」
2008.03.13
以前紹介した「テオもうひとりのゴッホ」を少しずつ時間を作り、やっと読み終えた。
ゴッホの絵を見る前に、一人でも多くの方に、この本を読んでほしい気持ちになった。
ゴッホを取り巻く多くの人々、弟テオをはじめテオの妻ヨハンナなしに今のゴッホは存在しない。そして周囲の目から見たゴッホの人間像を、新たに公表された98通の書簡から描写されている。確かにゴッホは狂人となり自殺し、テオもその死後5ヵ月後に精神病院(当初の発病は梅毒としてある)で死去している。
あまりにも厳しい環境の中でゴッホを取り巻く人々が、どれほど思い悩み生きてきたか、そして、その意志を受け継いだか。
そのことに感動せずにはいられない。生存中たった1枚しか売れなかったその絵が、今、数十億という値段で取引されるこの現実に、なんとも言えぬ憤りを感じてしまう。
今数十億で取引する人々が、ゴッホが生きた時代に、テオからゴッホの作品を進められても、誰一人として買う人はいないであろう。良き作品は時代が判断するとは言え、あまりに悲しすぎないか。
私は小学校の頃、絵描きになりたいけれど、一つだけ不安があった事を覚えている。もし、「気が狂ったらどうしよう」ということだった。けれど最近は、ゴッホのように極限まで追い込まれ絵を描き続ける事のできる人間は選ばれた人間だと。凡人である私が、そう簡単には極限にには行けないことがわかる。ただ時代や流行に流されない強い意志は、たとえ少しでもゴッホに近づきたい。